会話形式で楽しく学ぶ人事労務管理の基礎講座
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文書作成日:2021/06/10

 女性社員を管理職として任命することになり、その結果、その従業員の年間収入が配偶者よりも多くなることが想定された。そこで、夫婦共働きの場合に、子どもを夫婦いずれの被扶養者とするのがよいか、社労士に確認することとした。

 健康保険では、一定の家族を被扶養者として加入させることができますが、夫婦共働きで両親がそれぞれで健康保険の被保険者となっている場合には、子どもをどちらの被扶養者とすべきなのでしょうか。

 なるほど、お子さんの扶養の問題ですね。実際に何か事例があったのでしょうか?

 当社では女性の活躍を推進しており、今回、ある女性社員を管理職に抜擢することにしました。その社員は社内結婚をし、お子さんが1人いる女性なのですが、今回の抜擢でご主人の年収を上回ることが想定されるのです。

 ちなみに、お子さんは現在、父親の被扶養者になっています。

 なるほど。健康保険の被扶養者として認定されるためには「主として被保険者に生計を維持されている人」であることが要件の一つになっています。夫婦共働きであり、共同で生計を立てている世帯も多く、そのような場合に両親双方が子どもを扶養している状態ですので、今回のような課題が発生しますよね。
 現在の基本的な考え方は、被扶養者の届け出を提出する日の前年分について、年間収入の多い方の被扶養者とすることとが原則となっています。夫婦双方の年間収入が同程度の場合には、主として生計を維持するほうの被扶養者とすることができます。

 「同程度」や「主として」という表現はなかなか判別が難しいものですね。

 確かに私も難しいと感じています。実は2021年8月1日からいまご説明した基準が少し変わります。変更点はいくつかあるのですが、年間収入を判断する基準がその一つであり、前年度の収入ではなく過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んで多い方の被扶養者とすることになります。

 収入は残業時間数でも変わってくるので、なかなか判断が難しそうですね。場合によっては、今年は父親、来年は母親という切り替えを行う必要があるのでしょうか。

 そのように毎年手続きをすることは煩雑であるため、夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合には、主として生計を維持する方の被扶養者とできるとしています。

 なるほど。そのような形であれば、うまく運用できそうですね。

 今回は社内結婚ということでしたが、従業員の配偶者が公務員ということもあります。公務員は健康保険の被保険者ではなく、共済組合の組合員になりますが、配偶者に子どもの扶養手当やこれに相当する手当が支給されている場合には、配偶者の被扶養者として差し支えないとされています。

 これまでのお話を考えると、配偶者の年間収入や配偶者の加入している保険がどのようなものかの把握が重要ということですね。ちなみに配偶者が自営業の場合はどうなるのでしょうか。

 配偶者が自営業の場合は、おそらく国民健康保険の被保険者になっていると想像します。この場合には、直近の年間所得で見込んだ年間収入を比較することになっています。

 ここでもやはり年間の収入の確認ということですね。

 私からも、もう1点お聞きします。育児休業を取得して無給になると、育児休業給付金は受給できるものの、年間収入としては相当低下すると思うのですが、このようなときも同じように考える必要があるのでしょうか。

 原則的な考え方は変わらないのですが、育児休業等を取得した場合、休業により扶養する人を変更することが被扶養者の地位の安定にならないことから、育児休業期間中は特例的に被扶養者を異動しないことになっています。なお、新たに誕生した子どもは、改めて原則の考え方で被扶養者の認定が行われます。

 育児休業期間中は特例があるのですね。承知しました。

 今回の方も、夫婦双方の年間収入について、今後の想定もした上で子どもを夫婦いずれの被扶養者とするか考える必要がありますね。なお、夫婦の年間収入を比較する書類について、保険者から提出が求められることもあるかもしれませんので、事前にご承知おきください。

>>次回に続く



 扶養という言葉は、様々な場面で使われます。今回とりあげた健康保険の被扶養者のほかに、所得税の扶養親族についても共働きの夫婦の取扱いが話題になります。これについて、国税庁では「2以上の所得者がいる場合の扶養親族等の所属」として取扱いを明示しているため、確認しておくとよいでしょう。
国税庁「2以上の所得者がいる場合の扶養親族等の所属」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/09.htm

■参考リンク
協会けんぽ「被扶養者とは?」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat710/sb3160/sbb3163/1959-230/
法令等データベースサービス「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について(令和3年4月30日保保発0430第2号・保国発0430第1号)」
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210512S0010.pdf

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。


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